名古屋高等裁判所 昭和26年(う)124号 判決
記録を精査するに被害者飯田謙一郎及山北良子の提出に係る各被害上申書中の被害顛末に関する記載と原判決認定中の右関係部分の判示事実とは一致しており其判示事実と証拠との間には何等所論のやうなくいちがいは認められない然し被害者加賀鎰郎の分につき原判決は同人方に於ける窃盗の日時を昭和二十五年九月十八日午後九時頃と判示しているのに之が証拠として採用した右被害者の上申書の記載に依れば同月十九日午前八時五十分頃となつて居り被告人に対する司法警察員並検察官の作成した各供述調書の記載に依れば判示事実の年月日と同一になつている右十八日と十九日の内何れが真実に合致するかはにわかに判断し難いけれども仮りに十九日が真実なりとするも一日の差異あるに過ぎない而して特定の犯罪事実の同一性は当該犯罪の特別構成要件たる事実に付同一の認識が得られれば足り犯罪の日時、場所、手段方法等は何れも其構成要件たる事実を特定せしめる資料に過ぎないから其各資料を綜合して特定せられた特別構成要件たる事実が同一であれば其犯罪の日時の多少の相異の如きは犯罪事実の同一性に影響を与へるものではないと解する本件に於て右加賀鎰郎の被害上申書の記載に依れば被害日時の点を除き盜難被害の場所、被害品目、数量、犯行の手段方法等総へて原判決の判示事実と同一であつて只日時の点に於て一日の相異がある丈であるから原判決認定の事実と右被害上申書記載の事実とは同一事実であると認めるのが相当であつて一日の日時の差異の如きは其同一性を害するものでないことは前記説明に依り明かである。従て原判決が証拠に基かずして犯罪事実を認定し若しくは採証の法則に違反したとの弁護人所論は其理由がない又仮りに一日の採証の法則に違反したとの弁護人所論は其理由がない又仮りに一日の日時の相異が事実の誤認であるとするも前叙の如く犯罪の構成事実に誤認ない限り斯様な僅かな日時の相異の如きは判決に影響を及ぼさないこと明瞭であるから結局弁護人の所論は採用しない。